『ゴロウじいちゃんの話:あのときの夏』……13

『ゴロウじいちゃんの話:あのときの夏』……13

近澤可也 作
<……ジュンの決意……>
風が強くなり、小屋の窓をガタガタたたいた。

海なりが強くなり、ジュンは目覚めた。海の音がこれほど強いものなのか!?初めて知った。海がジュンになにかをうったえかけてくるようだ。

    ジュンは暗闇の中でおもった。自分とおなじ年ごろだったゴロウじちゃんたちは、ずいぶん大変な時代に生きていたんだ。初めて聞いた。大変な時代だったんだ。その時、子どもたちは何を喜び 何を悲しんだか。何を考え、どう行動したのか? 子供たちは どう生きていたのか?

でもなにか、ゴロウじいちゃんたちみんな、元気で明るく生きていたのでホッとした。戦時下の子供たちは元気だった。何故なんだろう。何にもモノがないのに。テレビゲームもなかった。食べるものも満足になかった。みんな生きることに必死だったんだ。

あの戦争で多くの犠牲者が出た。その方々のおかげで今の日本がある。ぼくたちは毎日平和で安全に生きている。ジュンは、平和の有難さがみにしみた。

なぜ戦争は起きたのか? ジュンにはまだまだ分からないことが多い。戦争と平和について知らないことが多い。ジュンは思った。これから、もっともっと歴史を知り、まだまだ勉強しなければならない。

(父さんのこと――。母さんのこと――。ぼくはずいぶんひどい目にあっている。人生は不公平だ。ぼくの父さんは交通事故で亡くなってもういない。家に帰っても母さんがいない。母さんも忙しくてぼくをかまってくれない。母さん、なんであんなに環境問題に熱心なのだろう)

ぼくは不満に思っていた。ほかの子に比べて、あれがすくない、これが少ないと文句をいつもいっていた。

たしかにぼくは、すぐ不平を言う。弱音を吐く。ぼくには無理だ、出来ない、とあきらめる。ゴロウじいちゃんたちは弱音をはかない。ぼくも見習らわなきゃ! とジュンは決意した。

人間は孤独。でも生きていかなければねばならない。コドクノ鳥の生き方が分かったような気がす。ぼくもやってみよう。

ジュンは安心して、いつのまにかふかい眠りにはいった。

日本海の海鳴りだけがとどろいている……。
*   *   *   *   *
『ゴロウじいちゃんの話:あのときの夏』(作:近澤可也)から、終戦記念日8月15日にちなんで、太平洋戦争戦時下の子どもたちの話を抜粋して投稿しました。
最後まで読んでいただいて有難うございました。
近澤可也 拝

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